<ご注意>
この話は私が勝手に考えたキャプテン翼世界のオリジナルストーリーが元になっています。
実際のキャプテン翼にこのようなエピソードはありませんのでお間違えのないようお願いします。
面白いと思われた方は、過去に私が書いたオリジナルストーリーが当ブログ内の「キャプテン翼小説」カテゴリーにあるので読んでみてください。
若島津健は小学生時代、元々FWの選手だった。
しかし、チームメイトに日向小次郎という強力なストライカーがいたため、チーム事情からGKへの転向を余儀なくされた。
空手で鍛えられた反射神経はGKをするにおいても役立ち、試合においては好セーブを連発した。
「GKも面白いものだな……」と、当時の若島津少年は思ったという。
「日本には自分以上のGKはいないのではないか」と天狗になっていた時期もあったという。
しかし、若林源三という存在に鼻をへし折られることになる。
小学生時代の全国大会決勝でふたりは初対決を迎える。
このとき若島津は4点を取られ、試合に敗れたわけであるが、これは大空翼に負けたのであり、若林に負けたとは思っていなかったという。
敗北を感じたのはフランスで行われたジュニアユース大会でのことであった。
この大会、若島津は準決勝まで日本のゴールマウスを守ったが、ケガもあり、決勝の西ドイツ戦については若林にGKの座を譲った。
すると、若林はカール・ハインツ・シュナイダーに2点は取られたものの、再三の好セーブでゴールを守った。
実は大会前、若島津は練習試合にて、このシュナイダーから何度もゴールを奪われ、ケガまでさせられていた。
また、シュナイダーが若林に対し「おまえが出ない限り日本は勝ち進めないぞ!」と檄を飛ばされたことを聞き、プライドを傷つけられてもいたという。
ワールドユース大会では、若島津は高校サッカー大会三連覇の勲章を引っさげて代表に選ばれたわけであるが、当時の監督が若林の師匠に当たる見上辰夫氏であったことから、若島津は自分が正GKに選ばれないことに憤慨し、一時はチームを飛び出したほどだった(後にチームの窮状を見かねて復帰している)。
日本代表チーム首脳陣は若林が正GKになることには異論がなかったが、若島津の才能を惜しむ声も大きかった。
そのとき現れたのが、若島津の師匠に当たる吉良耕三氏である。
後にオリンピック代表チームを率いた吉良氏は、若島津を説得し、もう一度FWをやってみないかと提案したのである。
若島津はジャンプ力やキック力、ドリブルにも定評があり、元々FWであったことを吉良氏は当然知っていた。
師匠からの頼みであったこともあり、若島津は了承したという。
試合に出られないよりかはマシかと思ったとも、日向とツートップが組めるのが嬉しく思っていたという説もある。
また、ひとりがいくつものポジションをこなすサッカーは、吉良氏が目指していたサッカーでもあった(吉良氏はかつてのオランダのトータルフットボールに憧れていたという説がある)。
FW若島津は機能した。
高さを生かしたポストプレイ、空手の蹴りを応用した多彩なシュート……
それにGKでもあった若島津は守備にも理解があり、前線でプレスをかけることにも長けていた。
その点においては日向以上だったという。
GK争いでは若林に負けたような形になったが、FWでは日向に負けてなるものかという意地があったという(新田については眼中になかったようだ)。
時には若林に代わり、ゴールマウスを守ることもあった。
世界でも珍しい二刀流GKだと話題にもなった。
他ではメキシコ代表GKのリカルド=エスパダスがいて、ふたりはアドバイスをし合う仲だという。
しかし、若島津の中では、まだ若林に対してわだかまりがあったという。
そのわだかまりが解けたのは、ワールドカップの舞台でのことだった。
予選の対カメルーン戦、アフリカのダイアモンド、黒い稲妻と呼ばれたレイモンド・チャンドラーにDF陣がかわされ、ピンチを迎えたときのことである。
放たれたシュートに対し、GK若林は一か八かの勝負で左側に飛んでいた。
右利きのGKには一番取りにくい位置を相手が狙ってくると考えたからである。
しかし、チャンドラーの放ったシュートは右を狙っていた。
万事休すかと思われたときに、シュートをブロックしたのは若島津だった。
GKとFW両方の心理がわかる若島津ならではの判断だった。
このとき、若島津は自分のこれまでのキャリアが全く無駄ではなかったことに気づいたという。
同時にこれは自分にしかできないプレイであり、この点において若林を越えたと思ったともいう。
後にアジア最高のリベロと呼ばれた松山光もシュートブロックの判断においては、若島津にはかなわなかったと認めている。
若島津はCBを務めてもいいプレイをしただろうとも語っている。
ワールドカップでの活躍もあり、若島津はその後、オランダの名門アヤックスなどでプレイした。
そこでも二刀流でプレイしたが、本人はFW、GK両方においてプレイするのが楽しかったという。
「考えてみれば、ふたつのポジションでサッカーが楽しめるなんて贅沢なことだよな」
若島津はメディアのインタビューにそう答えている。
彼もまた黄金世代を代表するひとりだろう。
文責:片桐宗政(元Jリーグチェアマン)
コメント
このシリーズを全部読みました。どれも面白く、しみじみと懐かしむように読めました。本来ならもう翼たちも引退して指導者になっているはずの年齢なのですよね……。
ワールドカップ優勝までは規定路線として、その後の彼らの様子もまだ見ていないのにまるで昔の事のように思えてしまいます。
文中に何度か出ている森崎の暴露本も読んでみたいですね。
まだ書かれていない、松山やディアスについても読んでみたいです。
コメントありがとうございます。
また、すべてを読んでいただいたようで、そちらもありがとうございます。
連載中のキャプテン翼が、あまりにも昔の人気キャラをひどい扱いにするので、納得がいかなかったのが書き始めた理由です。
ディアスなんかも書きたいと思っていますが、まだ漫画の連載が続いているので、一応そちらと辻褄があまりに合わないのもなんなので保留にしている感じです。