赤塚先生の葬儀でのタモリ氏の弔辞に感動したので、こんな架空話を作ってみました。
西暦20××年○月×日、ロボット工学の権威であり、世紀の発明というべきネコ型ロボット「ドラえもん」の開発者である野比のび太博士が老衰のため亡くなった。
二日後に行われた告別式には同級生でもある出木杉英才元首相、骨川コンツェルン総裁骨川スネ夫氏、剛田デパート社長剛田武氏などを初め、各界の著名人らが出席した。
また、世界各国、宇宙各星の元首クラスからも続々と弔電が届き、故人の偉大さを物語っている。
告別式では、出木杉英才元首相が代表として弔辞を読んだ。
以下に全文を記す。
出木杉首相による野比博士への弔辞全文
野比博士、いや野比くん。おつかれさまでした。
野比くん、僕は告白しなければならない。
僕は三つのことでずっと君に嫉妬していたんだ。
ひとつは君が僕の成績を追い越したこと。
今までずっと一番だった僕は初めて他人に負けたんだ。
ショックだったよ。
だけど、君というライバルがいたことで僕もがんばれたんだと思う。
進む道が違って、僕は政治家、君はロボット工学の権威になってしまったけれど、ずっと君に負けるものかとがんばっていたんだ。
ふたつめは、今の君の奥さん、しずかさんを君から奪えなかったことだ。
しずかさんはずっと君しか見ていなかったよ。
悔しかったな。
あんな素敵な奥さんを残して逝くなんて、なんてことを君はしたんだ。
でも、息子のノビスケくんもしっかりしているし、安心していいと思うよ。
そして、最後のひとつ……僕が一番悔しかったのは、君がドラえもんをはじめ、多くの仲間を持ち、多くの人に愛されていたことだ。
君のまわりには自然と多くの人が集まった。
僕はみんなからいくら秀才だとほめられても孤独だったから、ずっと悔しかったんだよ。
君がいなくなってみんな悲しんでいる。
それだけ君はみんなから好かれていたんだ。
昔の君は、いつも宿題を忘れたり、居眠りをしたり、テストで0点を取ったり、かけっこをすればビリで、道を歩けば犬にかまれたりと、まるでさえない少年だったけれど、君はけっしてめげなかった。
ドラえもんを初めとする多くの仲間にも助けられ、ときには君がみんなを助けて、多くの困難に打ち勝って行った。
そして、君は成長し、世界を変える発明を完成させた。
世界を変える発明をしたことで、君の名は永遠に歴史に刻み込まれたわけだけど、君から見れば、ただ友達をなんとかしたかっただけなんだよね。
有名になってから居心地の悪い思いをして、頭をかいて照れていた君の姿が今も目に焼きついているよ。
でも、それがきっと君の一番の良さなのだろうね。
今頃、居心地のいい天国で、座布団を枕代わりにして寝転びながら、僕たちのことをのんびりと見ているだろうか?
今まで無理して走り続けていたのだから、どうかゆっくりと休んでほしい。
さようなら、僕の永遠の友であり、ライバルでもあったのび太くん。
さようなら、世界一のロボット博士。
20××年○月×日 元日本国首相……いや、君の友人代表、出木杉英才
各界の著名人から寄せられたコメント(抜粋)
「あの馬鹿野郎が! 心の友であるオレ様をおいて先に逝っちまった! 絶対に許さねえからな!(以後、涙で言葉にならず)」
剛田デパート社長 剛田武氏
「小さい頃はずいぶんひどいことをしたけど、彼はそれでも僕をいつも助けてくれた。僕も皆から好かれる彼に嫉妬していたのかもしれない。のび太、すまなかった」
骨川コンツェルン総裁 骨川スネ夫氏
「亡き父から野比博士への感謝を忘れることのないよういつも聞かされていました。心からお悔やみ申し上げるとともに、国を挙げて一週間喪に服すことを約束します」
バウワンコ王国国王 クンタック2世陛下
「野比博士がいなければ、今の私はありえない。いくら感謝しても足りないほどの存在。お見舞いに行こうと思いながらも多忙でいけなかったのが心残りです。ご冥福をお祈りします」
ピリカ星元大統領 パピ氏
「スーパーマンもついに行ってしまったか。いくら科学が発展しても、天国だけはいけない場所だ。さびしいよ」
コーヤコーヤ星元大統領 ロップル氏
「時々、タイムマシンで過去にそっと覗きに行くよ。でも、悲しくて見ていられないかも。君には過去はあっても、もう未来はないんだね。ロボットは年を取らないから、君が年老いていくのを見ているのがずっとつらかった。せっかく僕が再び目覚めたのに、今度は君が目を閉じてしまうなんて……生まれ変わりというのが本当にあるのなら、またいつか会おうね」
ネコ型ロボット ドラえもん
コメント
しずかちゃんやノビスケの言葉も聞きたかったし、キー坊やイチ達の弔辞も聞きたかった。
匿名様
読んでいただきありがとうございます。
しずかやノビスケは遺族扱いになるので、弔辞を述べるのは少し違うかなと考えてはずしました。
ですが、彼女たちがのび太の思い出を語るなんて形は面白そうなので、また妄想して書いてみます。