キャプテン翼WY編はこうすれば面白くなったのではないか?

キャプテン翼ライジングサン
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はじめに

国民的どころか、世界的な漫画となっている我らが「キャプテン翼」。
現在の連載が10月まで休載中なので、ちょっと自分なりにかつてのような面白さがない理由を考えてみました。
いわゆる無印版……小学生編から中学生編、そしてジュニアユース編までの面白さは神がかり的な面白さでした。
スカイラブハリケーンやツインシュート、コンクリート壁にめり込むタイガーショットなど、今思えば、これはどうかと思うような技もありましたが、当時は読者も新鮮さを感じて度肝を抜かれたものです。
次から次へと現れる、翼を苦しめるライバル……それぞれに複雑な背景があり、魅力的な連中ばかりでした。
翼が成長したらしたで、怪我をさせることでうまくバランスを取り、主人公チームを苦戦させるという演出も良かったと思います。
ジュニアユース編の準々決勝アルゼンチン戦での三杉淳の復活、準決勝のフランス戦でのPK対決には特に興奮しましたね。
決勝もシュナイダーの若林からでも簡単にゴールを奪うという底知れない凄さに恐れさえ抱きました。
ワールドユース編の前に5週連続連載で、オランダユースと戦うという短期連載もありましたが、若島津がちょっと点を取られすぎかなと思う以外は悪くなかったです。
最後、翼がチームに帰ってくることで、全員が持ち味を出し、相手を倒すという展開も悪くなかったし、最後にオランダユース真のキャプテン、クライフォートが現れるところなど、これから先の連載が楽しみになったものです。
その翼が高校生世代となり、ワールドユース編として、帰ってくると聞いて、かつてのファンたちは狂喜乱舞したものなのですが……

太陽王子・葵の章

まず、最初に葵信伍という新キャラクターの話から始まったところで、肩透かしを食らったような気がしました。
翼が成長しすぎて感情移入しにくくなったのが理由で作られたキャラクターなのかもしれませんが、この頃の話はまるでコロコロコミックで連載したほうがよかったのではないかと思わせるような内容でした。
時折あるギャグは寒いものばかり……
ただ、ヘルナンデスがいい奴として登場したり、最後、ジェンティーレに葵が敗れるなど、そこは良かったと思います。
(彼らは後に無残な最後を迎えることになりますが……)
この葵がいわゆる翼信者で、後に読者の意識とまるで違う「翼マンセー(万歳)」につながる萌芽になり、日本代表からポジションをひとつ奪ったのも古い読者から見ると残念ではあります。
岬がワールドユース前に作者得意の交通事故で戦線離脱しますが、裏には葵を使いたいという作者の思いがあったのではないかと推測しています。
もちろん、翼と岬のコンビプレイばかりだと無双状態になってしまうので、考えぬいた結果なんでしょうが。
葵の役割がスーパーサブとか、そういう扱いなら良かったのかもしれませんが、一時期、岬と同等の扱いを受けていたのは昔のファンから見ると、少し違うのではないかと思いました。
葵の章のあと、翼とサンターナの対決があり、試合の内容はともかく、この時点で現実離れした物凄いサッカーをしているだけに、これから先どうやって描くのかと不安になったのを覚えています。

アジアユース編

アジア編については、個人的には大体、評価しています。
熱血監督、賀茂港によるリアルジャパン7の登場によって、岬、日向などの主力を外し、若島津の反抗、若林の怪我などのアクシデントをうまく交えることで、本来なら圧勝続きになるだろうと予想されたアジア編を苦戦させたことは悪くなかったと思います。
ただ、主力組がせっかく身につけてきた新たな技が、その後ほとんど生かされていないのが残念でした。
それと、肖俊光のペナルティエリア外から放たれた反動蹴速迅砲を若林に反応さえさせなかったのはどうかと思いました。
本来なら決めさせてほしくないところでしたが、決めさせるにしても、反応はしたけれど怪我を考慮して取りに行かなかったとか、そういう描写がほしかったです。
しかも、後にナトゥレーザに決められたとき、このときのことがなかったかのように描かれているし……
あと、三杉淳の扱いがあまりにもひどかったですかね。
せっかく、心臓病を治したというのに、まるでいいところがありませんでした。
アジアレベルならもっと活躍させても良かったと思うのですが。
せっかく身につけたドライブシュートもまったく出番がありませんでした。
岬がいないなら、三杉と翼でコンビを組ませるなんて手もあったのではないかと思っていました。
三杉淳については、最近の連載で心臓病が再発した気配がありますが、当時の読者もこのザマなら三杉は心臓病のまま切り札として出てくるほうが余程良かったと思ったものです。

ワールドユース本戦

そして問題のワールドユース本戦です。
なぜか、急遽、開催地が日本になりましたが、何か意味があったのでしょうか?
シュナイダー、ピエール、ディアスをはじめ、かつてのライバルたちが勢揃いし、さらには未知の能力を秘めた火野竜馬、クライフォート、レヴィンなど新キャラをどう絡めて行くのか興奮して待ち望んだのですが、その期待は無残に裏切られました。
古くから少年ジャンプの漫画には「テリーマン現象」「ヤムチャ化」などという用語があり、強さのインフレ化が進むと、かつてのライバルキャラたちが、新キャラの登場でかませ犬になるという現象がありますが、それでもうまい漫画家はかつてのライバルにも見せ場を用意していたり、新しいキャラに十分な魅力を持たせるものです。
つまり、こいつに負けるなら納得と思わせる描写が必要なのですが、この漫画には一切それがありませんでした。
かつてのライバルたちが軒並み一コマで片付けられ、ドイツ、フランス、アルゼンチンなどろくにプレイシーンさえないまま消えて行きました(後にこのとき、シュナイダーやディアスは怪我をしていた設定とされましたが)。
まず、ヘルナンデスとジェンティーレが火野竜馬に簡単にやられたところから暗雲が立ち込めたように思います。
かつてのパーフェクトキーパー、それも人気キャラが、突然現れた新キャラに3失点はないだろうと憤りました。
せめて、負けるにしても0-1で、火野竜馬に「さすがはイタリア」と言わせるシーンが欲しかったですね。
なんのためにジェンティーレという新キャラまで登場させたのか……
イタリアとウルグアイが0-0で引き分けていたりしたら、日本対イタリアが決勝トーナメント進出をかけた試合として面白く描けた可能性があり、もったいないとしか言いようがありません。

このウルグアイと日本の試合がまたひどかった。
ワールドユース編失敗の大きな原因のひとつに必殺シュートのインフレ化がありますが、相手キーパーを吹っ飛ばしたり、腕を破壊するようなシュートばかりになり、大量得点の大味な試合ばかりが増えるなど、ろくなものではありませんでした。
この試合で若島津は大量失点した上、股抜きでシュートを決められたり、翼がトルネードシュートを足の裏で止めに行ったら威力でスパイクのピンが吹っ飛んだり、回転中の火野竜馬に近づいたらDFが吹き飛ばされるなど、多少の演出は仕方がないにしても、ちょっと描写がひどすぎたように思います。
まだ、この火野竜馬がもっと後まで活躍するならまだしも、ブラジルキーパーサリナス相手にまったく歯が立たないなど、わけのわからないインフレ化がさらに進んでしまいました。
作者も反省したのか、スウェーデン戦は1-0という形で終わらせましたが、レヴィンの銅像さえ破壊するという殺人シュートは少しやりすぎだと思いました。
あの大岩を砕くパンチを放つミューラーの腕まで破壊したというのだからひどいものです。
幸い、日本のキーパーが若林になり、対策をしてきたから、試合自体は締まったものになりましたが、これではスウェーデンに簡単に負けたドイツの立場がありません。

あまりに面白くないから、ついに打ち切りになってしまいました。
それでも、ジャンプにとって功労漫画であったから、決勝まで描かれることになりましたが、準決勝の対オランダ戦が新聞見開き一コマで片付けられたシーンはもはや伝説です。
決勝の対ブラジル……この試合は比較的まともでした。
翼がブラジルDF陣に封じられ、仕方なく下がってプレイをしたり、サンターナに先制されるものの、岬が途中から復帰することで日本が逆転し(スカイダイブシュートはどうかと思いましたが)、そして、残り時間わずかでナトゥレーザが出てくるあたりはゾクゾクしたのを覚えています。
ナトゥレーザのプレイもインフレ化していた展開でこれ以上があるのかと思いましたが、実際、わずかとはいえ翼以上のプレイではないかと思わせる内容を見せて、若林からペナルティエリア外から点を取ったことも、まあ許容範囲かと思いました。
どうせなら、そのときシュナイダーあたりにプレイの講評をしてほしかったですが。
最後、翼がオーバーヘッドでサリナスから簡単に点を取ったのはあっけない終わり方でしたが、誌面の都合で仕方がなかったのでしょうね。
その後の話はコミックスで大幅に加筆されていたので良かったとは思います。

まとめ

長々と書いてしまいましたが、惜しいと思う点をまとめると以下のとおりです。
1)新キャラに大した魅力なし(事実、後に人気投票を行い、選ばれた選手だけで試合をする特別編がありましたが、ほとんどが旧作のキャラでした)。
2)かつての人気キャラにまったく出番がなかった。
3)必殺シュートのインフレ化。
4)ブラジルが異常に強すぎた。

特に2が致命的だったと思います。
ワールドユース本戦へ向かうまでの、ストーリー展開などはそう悪くなかったと思うのですが、一番盛り上がるべきはずの肝心の試合が面白くないのだから救いがありません。
あと、絵も週刊連載のわりに結構描き込まれていたと思います。
隔週連載である現在の絵の方が手抜きではないかと思うほどです。
このワールドユース編は非常に惜しい作品だったと思います。
絶望的なこのあとの連載に比べると、少し直すだけで名作になる可能性があったのではないかと今でも思います。
テクモのゲームのストーリーが原作より余程面白かったのもよくなかったかもしれません。
高橋先生はゲーム版の原案にも少し関わっていたはずなのですが……

現在の連載にまで言及しようと思いましたが、ワールドユース編だけで予想より長くなりましたので、以降は別記事にて記します。

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